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フリッジのナレッジVol.2:
「ハンバーグ弁当」職人をめざして。(竹内彩帆)

「フリッジのナレッジ、書いてみない?」
4月に入社して間もないある日、代表に声をかけられました。制作会社での勤務経験はないわたしです。「ベテランの人が書けばいいのに」。そう思いましたが、どうやらベテランには当たり前すぎてもう見えないものがあるようです。新参者ゆえに学んだことが記憶に新しく言語化しやすいというのはわかる気もしますし、それはわたしにとっても今のうち。学んだことをアウトプットするいい機会だと思いました。

幕の内弁当にならないように。

フリッジでの最初の仕事は、とある学び舎の入学案内パンフレット。4人の卒業生へのインタビュー音源と文字起こしから、各人400字前後を執筆する仕事でした。このパンフレットを読んだ保護者に「子どもをここで学ばせたい」と思ってもらうことが与えられたミッションです。

「4人の話す内容が重複しないよう、訴求したいことのバランスを見て同時に書き進めるといいよ」
「それぞれのエピソードに加えて、学校が考える教育的意義に触れるとより伝わるね」
「500~600字ほど書いてから削るイメージでやってみよう」

代表の細やかなアドバイスはどれも大きな学びでしたが、そのなかでひときわ光を放っていた助言が、「幕の内弁当にならないように」でした。その意味するところを代表は説明してくれましたし、理解もしました。でも、頭で理解するのと実践するのは別。この指示がどうしても満たせず、その後3,4回のリライトとなります。わたしが最初にぶちあたった大きな壁でした。

書く=選ぶ+掘る。

折詰の半分に艶めく白ご飯。黒ゴマが几帳面に振られ、小ぶりな梅干しがひっそりとたたずむ。隣の小部屋には焼き鮭かエビフライか小判型のコロッケ、またはその全部が鎮座し、卵焼き、肉じゃが、きんぴらごぼう、ポテトサラダとお漬物少々が隙間を埋めるように詰めこまれている。バリエーションはありますが、おおむね構成の決まった幕の内弁当の定義は「白飯と数種類のおかずからなる弁当」。つまり、「メイン」のないお弁当です。

「幕の内弁当」で代表が伝えたかったことは、こういうことです。

インタビューでは、修学旅行、学園祭、部活動などインタビュイー(話し手)にとって思い出深い事柄が多岐にわたって話されます。他方で、印象深い気づきはあっても具体的な出来事が思い出せないということも。こうした濃淡あるインタビュイーの話から、学び舎の良さが伝わる「一番伝えるべきこと」を抽出し、それが読者の脳内で臨場感をもってイメージされるよう、具体的なエピソードとともに伝える必要があります。なんでもかんでも詰めこむと、「伝えたいこと」はぼやける。一連のインタビューを読み終わったとき、保護者が「だからこの学び舎がいい」と感じるだけのインパクトが不可欠なのです。

書いて伝える役割を担う者に求められることはふたつです。「なにを伝えるか」を選び、それ以外は勇気を持って捨てること。選んだものには具体例で適切に肉付けすること(わたしは「掘る」と呼びたい)。そうした作業を経て「伝わる」ところまで責任をもつ必要があります。

1000のことにノーと言う。

初稿を提出したわたしに代表は、「結局なにが一番のポイントなのかが読んだ後にわからない」と一言。見事に「幕の内弁当」になりました。

「焦点を定めて書くんだよ」
「なにをどのくらい書くのか、全体の割合を見ながら考えよう」

アドバイスに従ってやってみるも、結局4つのうち2つには大幅に代表の手が入ることに。「自分の原稿と見比べてみて」と送られてきた代表の原稿は、「しょうが焼き弁当」であり、「ハンバーグ弁当」でした。「これが言いたい」という芯が見える。その芯に納得感を与える具体的なエピソードが、シンプルな表現で十二分に盛りこまれていました。なにがどうだからインタビュイーは印象深いと思ったのか。その経緯と心の移ろいが目の前で再現されているようにわかります。「自分の子どももこの学校で素晴らしい経験をして、一回り大きく成長してくれるはず」。そう確信する保護者の顔が目に浮かびました。

読んで伝わる。当たり前に存在しているかに見えるその自然な文章は、徹底した「選ぶ」「掘る」の工程を経たところにあります。でも、似たような営みは書くこと以外の領域でも大事にされているのではないでしょうか。「方向を間違えたり、やり過ぎたりしないようにするには、『本当は重要でも何でもない』1000のことにノーと言う必要がある」というのは、かのスティーブ・ジョブズの名言。文脈は異なりますが、あらゆる分野に通ずるいわゆる「引き算」の発想がここにもあったと、自分のなかでつながったのがとてもおもしろい体験でした。

伝わる文章が書きたい。人と接して、その人らしさ(組織であればその組織らしさ)を見出して伝えたい。寸分たがわぬ言葉をあてがって伝えたい。

わたしはフリッジで、「おいしいハンバーグ弁当」をつくる腕を磨いていきます。

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