「編集者って何をするんですか?」。初めてご一緒する大学の担当者様からよく聞かれることのひとつです。なるほど他の制作会社では、デザイナーとライターのみのチームで大学案内を手掛けることは珍しくない様子。しかし編集者こそ「伝わる冊子」づくりの要だとフリッジは考えます。大学案内を多数制作してきた弊社・渡辺へのインタビュー「後編」では、その具体的な制作過程とともに、編集者の幅広い役割をご紹介します。
【前編はこちら】
フリッジのナレッジVol.4:
「伝わる冊子」を作る心強いパートナーでありたい(前編)

関係者のストレスを減らす「段取り力」にこだわります。
| 渡辺「多くの大学では、夏の終わり頃から本格的に大学案内の制作に着手します。10~12月に取材と撮影、その後執筆を含む実際の誌面づくりを経て、3~4月の完成へと漕ぎつけます。半年以上にわたるプロジェクトなので、スケジュール管理は仕事の根幹です」
取材・撮影に際しては10~20回ほどキャンパスへ足を運ぶとのこと。訪問するたびに、大学の担当者様をはじめ、取材・撮影対象の学生や卒業生、先生方、フォトグラファーやデザイナーといった多くの関係者ときめ細かくコミュニケーションを図っていきます。
| 渡辺「インタビュー取材で的確に情報を引き出すために、高いコミュニケーション力が求められるのはいうまでもありません。大学の担当者様が学内でさまざまな調整をされる中、少しでも負担を減らせるようスムーズな段取りを意識していますが、撮影日ひとつを決めるのもそう簡単にはいかないことも。屋外撮影なら天気のいい日を選びたい。2週間先の天気予報を睨みながら複数の候補日を挙げますが、予報が変わるたびに候補日も変わっていきます。日程が決まるまでの間、フォトグラファーにずっと予定を空けておいてもらうわけにもいきません。こまめに皆様と相談を重ねて『この日にしよう』と決まるまで、気持ちは落ち着かないものです」
日どりを決めることもさることながら、重要なのは撮影当日に向けた綿密な準備です。
| 渡辺「編集者が事前に作る『台割』や『ラフ』(ページのレイアウト案)にもとづいて、どこで、だれの、どんなカットを撮るのかを事前に決めておく必要があります。それらを当日どんなスケジュールで撮り進めるのかも考えておかなければなりません。時間帯による日差しの具合を考慮に入れる必要がありますし、学生さんを何人か撮る場合、それぞれの授業やゼミの時間などもふまえて撮影順序を調整します。1日でどう進行すると無駄なく撮れるかを考えてスケジュールを組むのは、まるでパズルみたいな作業です」
こうした調整を円滑に進めるための秘訣とは?
| 渡辺「日頃の信頼関係あってこそでしょうね。AIには代替できないプロセスだと思っています」
取材・撮影が一段落したあとも、編集者のやるべきことはたくさんあります。
| 渡辺「100ページ前後におよぶ制作となるので、ページごとの進行管理が重要です。週単位、場合によっては1日単位で何をどこまで作るか計画を立てます。それによって大学の担当者様の確認負荷を分散するとともに、デザイナーをはじめとする制作メンバーが無理なく作業を進められるようにします。関わるすべての人たちの状況を見通して、全体の進行をコントロールしなければなりません」
最適なチームを組めることも、編集スキルのうちです。
冊子の制作ではデザイナーやフォトグラファーとチームを組んで進めます。だからこそ最適なスタッフィングを意識していると渡辺は話します。
| 渡辺「クライアントの課題や要望、媒体の性質をふまえて人選します。判断軸はスキルだけではありません。たとえばフォトグラファーであればスピーディーに撮るのかじっくり撮るのかなど、撮影スタイルをはじめとした個性も大切な要素です。それらを把握したうえでプロジェクトのゴールに適した人にお願いするようにしています」
チームで制作を進めるにあたり、どんなことを心がけているのでしょうか。
| 渡辺「たとえば、制作の過程でクライアントからデザインの修正希望を受けた場合。私の役割は、修正の主旨をしっかり咀嚼・整理してデザイナーに伝えることです。よりよいアイディアをデザイナーに求めることも珍しくありません。チームのメンバーは私にはない専門技能を持っていますし、個性を発揮してほしいわけですから、折に触れてプロへのリスペクトを伝えるよう心がけています。修正を含めて、高いモチベーションを持って関わってもらえるよう努めることは、チームを束ねる編集者の役割です」

たくさんの「言いたい」を我慢。これが編集の肝です。
編集者の最大の役割は、一冊全体のクオリティを管理することです。
| 渡辺「冊子を発行する側には『多くの情報を提供して読者にアピールしたい』という心理が働きます。しかし情報量が多すぎると絶対に読まれません。大切なところを強調して、そうでないところは控える。そうクライアントに提案するのは、編集者の大切な仕事のひとつです。もちろん、情報を多く盛り込むページもありますが、その場合は限られたスペースで読みやすさをいかに高められるかが腕の見せどころになります」
読んでもらうために肝心な要素として、文章そのもののクオリティが挙げられます。
| 渡辺「文章のクオリティはフリッジとしてとても大切にしています。そのために社内で何度も推敲を重ねます。一目で興味をひくキャッチコピーになっているか。すらすらと読めて理解が進む本文になっているか。ひとつひとつの言葉を地道に磨き上げることがなによりも大切だと考えています」
写真のクオリティ管理についても、編集者としての関わり方があるようです。
| 渡辺「写真の撮影方針はアートディレクターやデザイナーが主導して決めますが、撮影された写真からどれを選び、どんな風にトリミングして使用するかについて、私からデザイナーに意見を述べることは少なくありません。誌面にふさわしい写真の活かし方、その判断軸がぶれないよう常に意識しています」
写真やデザインの「質」を見極める審美眼は、編集者の大切な素養のひとつです。だからといって、自分の趣味を押し通すわけではありません。常に読者を想定した「一歩引いた目」による冷静な判断力を兼ね備えた上で、フォトグラファーやデザイナーといったプロフェッショナルたちと対等に議論することが求められます。そのバランス感覚こそが、編集者の要です。
今回、前編・後編を通じて、編集者の行動と思考のかたちを紐解いてきました。結局のところ編集とは、伝わる一冊を形にするために「適切に情報を構成する技術」といえるでしょう。情報を取捨選択して、言うべきことを強調し、伝達度を高める。クライアントが気づいていなかった「価値」を発見し、発信することもあります。これができるのは私たちが客観的な立場から俯瞰するからこそのような気もします。
私たちの強みのひとつに、この「編集力」があります。みなさまの大学案内づくりで、ぜひご一緒できたらと思っています。
【WORKS(大学関係)】

